さて、前回は「ポートフォリオのリスク配分」というテーマで、「ラルフ・ビンスの資金管理大全」という書籍で紹介されていた、新たなモデルについて書きました。
今回は、パラメータ(たとえば移動平均線の期間とか)の最適化の目的関数(≒システム評価方法)とマネージメントの関係について書いてみたいと思います。
1.考察のキッカケ
今まで、(移動平均線の計算期間とかの)パラメータ最適化の時の目的関数について、いろいろ試行錯誤をして、幾つかの計算式(例えばシャープレシオとか)の候補の中から、実際にウォークフォワードテストをしてみて上手くいきそうな目的関数を選んで、使っていました。
ただ、なぜその計算式で上手くいくと思うのか、なぜ良いと思うのか、という点で、実は悶々としていて、今一歩確信を持てなかったのも事実です。
しかし、「ラルフ・ビンスの資金管理大全」を読んでいると、以下の様な記述をキッカケに、頭の中がスッキリしました。
「 オプティマルfにおける幾何平均が大きいほど、またオプティマルfが小さいほど優れたシステムである 」 (「ラルフ・ビンスの資金管理大全」より)
2.サンプル・データで比較
今まで、資産曲線は滑らかに右肩上がりなのが良い、と考えてきました。 なので、「最適化の目的関数」を検討する際も、この「滑らかさ」と「収益性」のバランスを表現できそうな計算式を、候補に挙げてきました。 ただ、資産曲線の滑らかさを目指す理由は、リスク量を増やすと、それだけリターンも増えるし、増やしやすい、という事なのだと思います。
さて、前述の「オプティマルfにおける幾何平均」を目的関数にするとどうなるのか、という話しです。 私が最初に思ったことは、「一部の偶然で極端なリターンがあったら、過大評価されるんじゃないのか?」 というものでした。
そこで、幾何平均が同じ2つのサンプル・データを使って、比較してみました。 システムAは「1.1と1/1.1のデータが8回に、2が一つで、都合17トレード」、システムBは「(2*1.1)^(1/16)が16トレード分と、1/1.1が1トレード」 です。
2つとも同じ幾何平均ですが、見た目、あきらかに「システムB」の方がいいでしょう(笑)
実際、それぞれのオプティマルf(資産を最大にする初期リスク%)を求めて、資産曲線を作ってみると、雲泥の差が生じるのが解ります。
みた目からして資産曲線が滑らかな「システムB」の方が、リスク量を増やした場合の効果を得やすく、リスク量を高くできた(オプティマルfが高い)結果、幾何平均(≒収益)がとても良くなる、という事だと思います。
つまり、「オプティマルfにおける幾何平均」を評価することは、資産曲線の滑らかさを評価する事にもなる、という事だと思いましたし、これこそが目的関数であるべきだと、今までモヤモヤしていた事が、とてもスッキリしました。
3.目的関数に関する考察1
けっきょく冒頭にも書いた事の繰り返しになってしまうのですが、システムを評価(もしくはパラメータ最適化)するには、どんな目的関数がよいのか? という点に関する考察です。
資産曲線が滑らかで、リスク・リワードが良いシステムを高く評価するのが良い、という事の目的は、資産を最大化する事ができるシステムを識別する、という事だと思うので、結局、資産を最大化させる、「オプティマルfにおける幾何平均が高いほど良い」という観点に帰着するのだと思います。
ただ冒頭で引用紹介したとおり、同じ幾何平均だと、オプティマルfは小さい方がよい、という条件はつくのですが。。 あと、「幾何平均÷オプティマルf」が同じだった場合だと、幾何平均が高い方がいいのだと思います。
なので、システム評価・最適化では、資産の最大化を目指すので、結局、マネージメントと表裏一体なんだなぁ~と思った事が、今回、書きたかった点のひとつです。
4.目的関数に関する考察2
じゃぁ、他のシステム評価方法(≒目的関数)は無意味なのか? という疑問が沸くと思うのですが、私は以下の様に整理してみました。
パラメータ最適化の目的関数(≒システム評価方法)を検討するにあたっては、結局、以下の3つぐらいの観点があって、それらを分けて考える必要があるな、と思いました。
■ 目的関数(≒システム評価方法)の観点
- 資産を最大化してくれるか?
- (自分が気にしている)リスクに対してリワードがよいか?
- 堅牢なパラメータ値か?(局所解に陥っていないか?)
つまり、色々な評価方法があるけど、どの観点を評価しているのか? というのを見極める必要があるのだと思います。
そして、上記「1.」の観点については、複利で運用するのであれば、「オプティマルfにおける幾何平均」がベストだと思いました。
#前述の通り、もう少し配慮すべき事はありますが
上記「2.」は、結局、自分の主観的な好みを定量的に表現してくれるか?という事になるのではないか、と思います。 なので、資産の最大化だけを目指すのであれば、考えなくていいのかもしれません。 要は、主観的な、自分好みの資産曲線の美しさ、という観点です。
上記「3.」の観点については、パラメータ最適化の際は「1.」に、もう一工夫が必要な観点だと思います。 ただ、それは「オプティマルfにおける幾何平均」が最大になる事を期待しての、目的関数における工夫である方がいいんじゃないかなぁ、って思っています。
いろいろ取り留めの無い事を書きましたが、今の所は「こう考えて整理したらスッキリした~」という事なので、生暖かく見守って頂ければ幸いですm(__)m
ではでは~
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