2012/08/16

戦略検討 - 「行動経済学」(1)整理してみた



さて前回は、「ゲームのモデル化」を検討している様子を書きました。その中で、「FXトレーダ(負け組)」を「行動ファイナンス」を使ってモデル化しようと考えたところまで書きました。今回はそのモデル化に向けて、「行動経済学」なるものについて整理している様子を書いてみたいと思います。

さて、今回対象となる書籍。
●書籍名:「行動経済学入門
心理学者カーネマン教授の研究を礎とした新しい「経済学」の分野で、発展途上ながらも広まりつつある「行動経済学」を広い観点から紹介している入門書籍。「行動経済学」は、従来の経済学のモデルをベースにしつつ、現実の経済現象や人間行動を説明する補完的アプローチが中心。
#ちなみに、以前のブログで紹介した書籍は、各論が並べてある書き方だったので要約しずらい≒体系がわかりづらいという理由で却下。。。

さっそく、この書籍をベースに「行動経済学」を整理。

【書籍の流れ】
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1.従来の標準的な経済学が前提としている人間は「超合理的」/「超自制的」/「超利己的」
  この前提に、どのような問題があるのか。
2.「超合理性」を現実的なレベルに少し緩めた「限定的合理性」だった場合の、
  行動や社会へのインパクトについての具体例。
3.「限定合理性」の性質である「近道選び」(ヒューリスティック)という行動原理について。
  「近道選び」とは不確実な状況で、厳密な計算や思索を行わずに、陥りやすい思考方法や
  判断プロセス。経験則による判断や思考のショートカット等。
4.不確実な状況での行動モデルである「プロスペクト理論」について。
  「近道選び」は判断までのプロセスに関するもの。「プロスペクト理論」は、
  正しい判断結果であった場合でも、実際はどういう行動になるのかという側面。
5.「行動ファイナンス」の研究成果を紹介。「行動ファイナンス」は、
  「行動経済学」を金融・資本市場分析に応用したもの。
6.従来の前提である「超自制的」性質について実際は異なるという点を説明
7.従来の前提である「超利己的」性質について実際は異なるという点を説明
8.「行動経済学」の今後の可能性と限界について
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「行動経済学」を大雑把に言うと、従来の経済学が人間を「超合理的」/「超自制的」/「超利己的」という前提にしているが、現実とかけ離れている。そこで実際はどうなのかを心理学観点の実験を通してモデル化したもの。興味深い点は、従来の前提と異なる人間像の存在が少なくても、合理的な人間の行動を変えてしまうという点。

従来の経済学では説明できない経済行動・現象が出てくるたびに、これを説明するモデルを打ち出すという立場なので、従来の経済学を根本的に覆そうとするものではないし、一本の整合的なモデル体系を示すわけでは無い。

さて、今回のブログの流れ。
 
ゲーム理論のモデル化で定義した「FXトレーダ(負け組)」を上手くモデル化する為に必要そうな観点に絞って、前述の「行動経済学」を要約・整理する。

【記事の流れ】
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1.従来の経済学が前提としていた人間像(超合理的/超自制的/超利己的)
2.「超合理的」は実際どうなのか
  「近道選び」(ヒューリスティック)について
  「プロスペクト理論」について
3.考察と課題
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さっそく「従来の経済学が前提としている人間像」から。

【経済学が前提としている人間像】
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標準的な経済学の世界では、人間の行動様式は画一的なモデルを仮定
これが感覚的に合わない背景は、経済学が「人間の合理性を徹底的に追求していくことによっていったい何が可能かということを、とことんまで理論家しようとしている」というポリシーの中、人間像のデフォルメで、分析を制御可能なものにしているという理由。そして前提とした人間像は、平均的であり、そこからはずれる非合理的な人間の行動は相殺されて、結局理論値に落ち着くという理屈。つまり、平均的な人間は経済学で前提としている人間で、そうでない人の行動のばらつきには偏りが無いという。。。

1.「超合理的」な人
  自分にとって利用可能な膨大な量の情報を、コンピュータの様に完璧に処理し、最も望ましい
  答えを常に導き出す様な人。
  
2.「超自制的」な人
  初めに決めた計画通りに実行する人。
  もちろん、計画は「超合理的」に決めた上で。
  
3.「超利己的」な人
  自身の利益のみを追求。なので、寄付とかしない。
  助け合いの精神はゼロ。仁義なんてない。
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そんなやつどこにおるねん。。。

さて次は、人間像の一つ目の前提である「超合理的」について。

【「超合理的」は実際どうなのか(近道選び)
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不確実性が存在する下での話。「近道選び」(ヒューリスティック)とは、能力限界が理由で完璧な合理性は期待できないので、問題を解決するプロセスを簡単にするために、経なければならない複雑な過程を省略した、ある程度合理的な意思決定。この「近道選び」によって発生する間違いを「バイアス」と呼ぶ。

カーネマンらは、以下の3つの代表的な「近道選び」を唱えた。つまり不確実性が存在する中では、実際の人間は以下の様な判断をしがちだ、という事。

1.代表性
  統計理論に基づく推測を行うべき状況で、本来客観的な意味で法則が存在しないときに、
  直感的な判断で、主観的な法則を導き出してしまう行動。主観的な確率評価は、客観的
  なものから乖離してしまいがち。
  「結合効果」、「基準確率の無視」、「標本数の無視」、「ギャンブラーの過ち」等

2.利用可能性
  容易に思い浮かぶ情報を優先させて判断してしまう認識プロセス。
  思い浮かびやすい事象に対しては過大な確率を、逆に思いつきにくい事象に対しては
  過小な確率を与えるというバイアスを持つ。思い浮かびやすい要素は以下。
  
  ・親近性(その事象について知識をもっている)
  ・重要性(その事象について聞いたことがある)
  ・属人性(事象が個人的に関連を持つ)
  ・最近性(比較的最近起こった事象)
  
3.係留(アンカリング)
  数量的な評価を行う際の回答が、その時にもたされている情報に左右されるという仮説。
  回答に要する時間が短く限られている場合は、係留効果が発現しやすいが、時間が十分に
  ある場合は、影響を受けない。以下は、係留効果起因のバイアス。
  
  連続的な事象の確率を過大評価、離散的な事象の確率を過小に見積もる
  推定値の信頼区間を必要以上に狭くとる
  
以下はその他の、問題認識プロセスを歪める要因。

4.自信過剰/自信過小
  結果や証拠の印象の強さが、証拠の正確さよりも相対的に強いほど「自信過剰」。
  正確さが、印象の強さを上回るほど「自信過小」。
  
  ・自信過剰 : 自信の判断を必要以上に性格であると思い込む現象
  ・自信過小 : 自分の判断の正しさを必要以上に小さく見積もるような態度
  
5.認知不協和
  判断後に、その判断が間違えているような状況での行動パターン。
  信じていたことと現実が異なるケースで発生する精神的な苦痛による感情
  を「認知不協和」と呼ぶ。信念と客観的な認知の間に矛盾が生じているという意味。
  認知不協和が生じそうな場合に、顕在化を回避する行動をとる。
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さて次は、突如現る「プロスペクト理論」について。

【「超合理的」は実際どうなのか(プロスペクト理論)
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先述の「近道選び」が判断プロセスでの歪みである事に対して、この「プロスペクト理論」は、正しく判断したとしても、くじ引きや株式投資など不確実な状況で実際はどう行動するのかについて説明する行動モデル。

1.「行動パターン」の3つの性質
  あくまでも、「参照点」と呼ばれる「ある水準」からの変化で評価する。
 
 ・「損失回避性」
   損失をそれと同じ規模の利得よりも重大に受け止める。
   →多くの実証実験の結果、「損失は利得よりも2~2.5倍程度重要」
 ・「感応度逓減」
   参照点から離れれば離れるほど、利得の変化から生じる価値の変化分が小さくなる
 ・「確実性効果」
   わずかな確率であっても発生する可能性があるケースを強く意識する
 
2.前述「損失回避性」/「感応度逓減」のグラフと式
  損失をそれと同じ規模の利得よりも重大に受け止め、参照点から離れれば離れるほど、
  額の変化から生じる価値の変化分が小さくなる

  ・「価値関数」のグラフ
   横軸が客観的な価値に対して、縦軸が主観的な価値で、得られる満足度でもある。
    
  ・「価値関数」の計算式
   v(x):価値関数、x:実際の価値
   λ:「損失回避性」を現す定数で、実験の結果では2~2.5
   β:「感応度逓減」を表す定数で1未満の正数。「行動ファイナンス入門 」では0.88
 
3.前述「確実性効果」のグラフと式
  個々の事象が起きる確立pを、心理的で主観的な確率価値π(p)に変換するのが特徴。
  わずかな確率であっても発生する可能性があるケースを強く意識する。
  
  ・「確率価値」のグラフ
   点線が客観的確率で、実線が主観的な確率  

     
  ・「確率価値π(p)」の計算式 

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そして、従来の「標準的なの経済学」「行動経済学の考え方」「近道選び」「プロスペクト理論」のそれぞれの関係が図示されていたので掲載。とっても解りやすい。


この図を見て解るとおり、「行動経済学」では不確実な状況をどう判断したとしても、行動は「プロスペクト理論」に基づいて行動を起こすことになる。今回「FXトレーダー(負け組)」の行動をモデル化するためにこの「行動経済学」について整理した。つまり、一般的な人間の行動をモデル化した「プロスペクト理論」でモデル化された行動の歪みを収益の源泉と考えればよさげ!
もう少し言うと、同じ「負け組」でも、「勝ち組」と同じ判断結果だけど「プロスペクト理論」で行動が歪められるパターンと、そもそも「判断そのもの」も間違えて「プロスペクト理論」でさらに歪んだ行動になるパターンで上手く分ける事ができればなおよし。



さて、この「プロスペクト理論」をどうやって、
前回モデル化した「ゲーム理論」の枠組みにあてはめるか。





先は長い。。。




そして、「FXシステムトレード初心者奮闘記」は「基本戦略の選択」に向けて、役に立つかどうかわからないまま知識を整理・検討している様子を継続し、「プロスペクト理論」をどう「ゲーム理論」にあてはめるのかという検討に進むのでした。
#運用中EAのパフォーマンスは、元本割れが2%弱に拡大。。

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